超音波画像観察≪超音波観察セミナーの一コマの報告≫⑳

超音波画像観察≪超音波観察セミナーの一コマの報告≫⑳

前号の続きで、昨年奈良県で開催しました超音波エコーセミナーの一コマをご紹介します。
足関節をテーマにお話ししまして、前号ではATFLの描出方法とATFL損傷の症例をご紹介しました。今回は小学児童の足関節の捻挫の症例を報告します。
患者さんは小学3年生の女の子、階段にて踏み外した際に足関節を内反し負傷されたものです。写真①は初検時の外観の様子。患側がやや腫脹しているのがわかると思います。触診しますと腓骨外果下端部の強圧痛を認めました。足関節に前方へのストレスをかけますと同部に痛みを誘発します。歩行痛もあり跛行を呈しています。疑うべきは、腓骨ATFL付着部の剥離骨折です。というのも小学生期の足関節内返し捻挫の場合、その約8割に骨折が認められるとの報告があります。それでは超音波観察です。
案の定、ATFL付着部の剥離が認められました(画像①)。写真②のように前方引き出しストレスをかけますと剥離部の骨片が浮き上がるのがわかります(画像②)。この剥離骨片は、関節軟骨の最下層、石灰化軟骨層の剥離(一部軟骨下骨)と考えられます。このような症例は、レントゲンでの描出は難しいそうです(多くの文献でそのような報告があります)。
この症例に対してはU字型にシーネを作成し巻軸包帯で固定しました(写真③④⑤)。固定期間は約3週間が必要と言われています。画像③は3週間後の超音波画像です。ここでは静止画ですので確認しにくいですが前方ストレスをかけても剥離部の不安定感はみられません。ただ厄介なのは、このような症例は1週間程度で歩行痛が劇的に軽減されます。つまり固定の継続に同意が得られにくいことがあるわけです。そこで超音波画像で患者さんにも病態を確認してもらい剥離部の安定性が得られるまで固定を継続することを理解してもらう必要があります。また剥離部の安定性が得られるころと同時に圧痛が消失することが多いように感じます。ということは、圧痛の消失が固定除去の目安にもなるということですね。小学期の足関節捻挫には注意して施術してください。固定期間をしっかり設けないと習慣性の捻挫になってしまうことが危惧されますので。

(公社)滋賀県柔道整復師会 川戸 典知

 

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