あなたの夢を実現するためには
地域の人々の役に立つために
受領委任「協定」が必要!
日本の社会保障制度では国民皆保険制度が確立され、誰もが平等に医療を受けることができる環境が整っています。そして、必要な手続きを踏まえれば、柔道整復師(接骨院)でも医療保険が使えます(柔道整復療養費)。しかし、「柔道整復師という資格を持っている」という理由で健康保険が使える訳ではありません。 患者さんたちが、接骨院で健康保険を使えるようにするためには、国がそれを認める仕組み(制度)が必要なのです。しかし、保険の仕組みや請求方法、制度的な裏付けについては、現在の養成校のカリキュラムには組み込まれていないため、学生はこの分野の知識が欠落してしまいがちです。皆さんの「人々の役に立ちたい」という夢を叶えるために必要なことを少し説明してみましょう。
例え、どれほどの施術知識や技術があろうとも、たった一人の柔道整復師が全ての柔道整復師を代表して、国や行政と交渉をするための場に立つことはできません。まして、日本のどこでも同じように柔道整復術を安定して受けることのできる仕組み(制度)を創り上げ、それを徹底し、維持することは、単独ではできません。我われの先輩柔道整復師は、そのことを痛感し、長い歴史の中で、柔道整復術を行う者が集い、大きな犠牲と努力・苦労の末に、ようやく(公益)社法人柔道整復師会という柔道整復師による団体組織を創りあげたのです。
その公益社団法人が行う公益活動を基にした柔道整復師の公益性を背景に、柔道整復師が行う施術にかかる費用(柔整療養費)については、本来ならば「償還払い(一旦は患者さんが施術に必要な費用の全額を支払い、領収証をもとに後から患者さん自身が保険請求をする仕組み)」が原則の療養費の中で、医師・病院等で医療保険が使えるのと殆ど変わらないように保険が使える「受領委任払い(患者さんが自分で保険請求をすることを柔道整復師に委任署名することによって保険が使える仕組み)」を適用可能にしたのです。こうした仕組みや制度を創り上げ維持しなければ、接骨院では保険が使えないのです。
つまり、接骨院で保険が使えるようにするためには、「都道府県知事」と「地方厚生(支)局長」と「各都道府県の公益社団法人柔道整復師会会長」の三者による保険上の細かな事項を定めた「三者協定(受領委任協定)」を締結しなければなりません。その協定を締結できるのは、個人の柔道整復師ではなく、公益社団のみです。「個人」ではできないことが、多くの資格者が集まって創った社団組織だからこそ可能になるのです。 また、柔道整復師の保険取扱いの基となるこの「受領委任払い制度」が認められているのは、あくまでも「地域住民の利便性」、つまり「患者さんのため」ということを忘れてはいけません。
災害時・スポーツ救護の実現に必要なもの
災害時やスポーツの現場で、救護活動等で活躍するという夢の実現には、いったい何が必要となるでしょう?
柔道整復師は、突然発生する怪我や痛みに対応する最も身近な資格と言っても過言ではありません。災害時やスポーツ現場で発生した怪我の場合には、その現場ですぐに手術をすることやさまざまな医療用器材を使用することはできません。しかし、場所や時を選ばずに骨折や脱臼の徒手整復を行い、薬・注射を使わずに手技や固定によって痛みや怪我を治すことができる救急処置について、柔道整復術はまさに最適です。
とはいえ、その資格と技術を持ってはいても、災害時にその力を発揮するためには、我われの手技を求める被災者やスポーツ外傷の受傷者がいる現場に入り、怪我をした人達に触れられる環境がなければ、柔道整復師であってもただの人でしかありません。つまり、柔道整復術の手技を発揮できる環境をどのように構築するかが最も重要になるのです。
いつどこで発生するか分からない災害時においては、災害地の救護所を統治する自治体、またスポーツ催事では主催者との協力協議を平時に予め行い、いつでもどこでも対応できる体制を継続的に整備することは単独ではできません。柔道整復師として実力を発揮できる人材数とそれぞれを繫ぐネットワーク、つまり組織力が必要となるのです。
何が必要になるのでしょうか?
ケガや痛みを治す専門家であるために
柔道整復師は外傷の専門家です。しかし、資格を取得した以降に何もしなければ、どんどん知識や技術が古く遅れたものになってしまいます。 伝統医療というのは、これまでの過去や経緯を何も変えずにただ延々と続けていくことではありません。時代の流れやニーズによって、今やるべきことを最優先し、常に求めに対応できるように変わり続け、それぞれのニーズに応え、地域に永く残り続けたからこそ、時代を越えて伝え繫ぐことができ、「伝統医 療」となるのです。そのためには、日々の施術の中で常に知識と技術を研鑽する必要があります。
しかし、たった独りの自己研鑽には自ずと限界があります。違った意見や考え方、さまざまな治療方法・異なった手技を持つ柔道整復師が沢山いて、異なるアプローチ方法や思考を幾重にも重ね、それらを自在に交流させることで新たな技術革新が生まれるのです。技術を磨くには、同じ資格と志を持つ多くの仲間が必要です。それによって、柔道整復師は地域に根付き、外傷の専門家であり続けることができるのです。
医療・介護・地域支援・予防の実現のために
現在、日本の65歳以上の人口は約3,000万人(国民の約4人に1人)を超え、更に今後、団塊の世代(約800万人)が75歳以上になる2025年以降は、医療や介護の需要が大きく増加することは間違いありません。 そして、今後はただ長生きするだけの「平均寿命」ではなく、心身ともに健康で自立した生活ができる「健康寿命」をより長くする方向への取り組みが進められており、その中心的な仕組みとして、自分の住み慣れた地域や自宅で、最期まで生き甲斐をもって暮らせるようにすることを目的とした「地域包括ケアシステム」が考案され、より小さな地域に特化した医療・介護の包括的な連携方法がそれぞれの地域で模索されています。 その仕組みの中で重要なことは、筋肉や関節等の運動器の機能が低下しないように維持し予防することと、機能低下した部分を如何に回復させられるかということです。柔道整復師は、急性期の外傷への施術と共に、怪我を繰り返さないようにするための指導も同時にしてきました。それは、まだ怪我をしていない人達に対しても、自立状態を保持し、転倒等をしないようにする予防に大いに役立ち、今後はこの分野での活躍が期待される存在でもあります。
しかし、行政の介護事業には、通常は介護施設として登録した法人が契約して参入する方法等が主流なため、個々の柔道整復師の資格だけでは地域の自治体と連携して地域支援や介護予防事業の契約等を結ぶことはなかなか叶いません。そうした交渉や契約を可能にするのは、多くの仲間とそのネットワークによって組織活動を行い、すでに地域の自治体との間で「防災や救護」等の協定を締結し、信頼関係を結んで連携している公益社団しかありません。
同じ資格と職業の仲間が同じ目的のために集まれば、その力と可能性は何倍にも膨らみ、地域の人達のために役立てることが可能になるのです。
何かを実現させるためには、「個人」では限界がある。
世界中で活躍できる環境を整備するには!
インフラが未整備な世界中の国々で、実際に柔道整復術の整復法や固定法といった手技療法を普及させるには、実は大きな障壁があります。それは、世界各地の国によって医療や福祉といった社会保障に対する考え方や仕組みが異なるからです。そこには国ごとの文化や歴史を背景としたさまざまな制度があります。そうしたそれぞれの国々で、日本独自の伝統医療を用いて、自国の患者さんに触れても良いと認めて貰うための信頼を得ることは、とても難しいことです。
具体的には、言葉や考え方の異なる海外の国々との様々な交渉を、単独の柔道整復師が実現させることは容易いものではありません。それぞれの国や地域の理解を得るためには、実際にそれらの国々で長期間にわたって、柔道整復術の効果を示すことで理解を得る必要があります。
さらに、国境の壁を打ち破るには、日本の外務省や関係機関だけでなく相手国の行政との地道な交渉をする多くの仲間と組織が必要になります。 公益社団法人日本柔道整復師会は、既に JICA(国際協力機構)との間でいくつもの国際事業を実現し、複数の国々で柔道整復術の普及活動を行い、海外から柔道整復術の指導者を育成するプロジェクトも行っています。
同じ資格を持つ仲間が手をつなぐ必要がある!
教育者・研究者を確保可能にする環境の構築!
業界を維持するためには、国家資格者である柔道整復師の質を一定に維持する必要があります。そこで、公益社団法人柔道整復師会では、各地域で学術および保険に関する講習会を開催して会員の知識や技術の向上に努めています。 また、柔道整復師の養成施設である専門学校や大学に 於いて、教育現場で学生の資質向上を目的としたカリキュラムの見直しについても積極的に働きかけをしています。 このことは、柔道整復学のさらなる研鑽を通じ、柔道整復学の教育者や研究者を生み出す環境の構築にもつながります。
さらに、資格者はこれまでのように地域で開業するだけではなく、次世代や未来の業界発展のために、国内・国外で我々の知識と技術を必要としてくれる人達に、柔道整復を普及させる基盤を創ることにもつながります。
そして、何よりも業界を支える最も重要な礎は「人」です。そうした貴重な人材を業界自身がしっかりと育んでいくためにも、今後は学問的な部分での更なる研究や、科学的データの構築、経験と実技による裏付けを兼ね備えた教育者・研究者の活躍は必須となってきます。
公益社団法人 日本柔道整復師会
〒110-0007 東京都台東区上野公園16-9
tel. 03-3821-3511